(湯浅 誠/カクタス・コミュニケーションズ株式会社
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カリフォルニア州サンフランシスコ(2018年11月14) – 来月開催予定のIEEE 国際電子デバイス会議 (IEDM)(https://ieee-iedm.org/)から、最新映像が公開されました。IEDMは、トランジスタおよび関連マイクロ/ナノエレクトロニクス・デバイス分野におけるブレイクスルーと新コンセプトを発表する上でもっとも影響力のある、世界最大のフォーラムです。過去64年にわたる半導体技術の発展へのIEDMの貢献を伝え、IEDM 2018の技術プログラムのハイライトを紹介するために制作されたこの映像は、IEDMホームページとYouTubeでご覧頂けます。 ・IEDMホームページはこちら ・YouTube動画はこちら ・動画中国語版(簡体字)はこちら IEDM 2018の広報委員長でありIBM Research(チューリッヒ)研究員のKirsten Moselundは、次のように述べています。「映像を作るうちに、多様な技術の発展においてIEDMがいかに主要な役割を果たし、そしてマイクロエレクトロニクス/エレクトロニクス業界を、ニューロモルフィックコンピューティングや3D集積をはじめとする各種最新メモリの時代へと歩ませてきたかを伝えたい気持ちが高まってきました。迫力ある映像を駆使してこれらのトピックを大きく取り上げることで、技術革新の中枢としてのIEDMへの理解を深め、より多くの参加者を集めることができればと考えています」。 映像の作成にあたったのは、科学技術コミュニケーションを専門とするカクタス・コミュニケーションズ株式会社です。「科学技術コミュニケーションを専門とするカクタスは、IEDMのような業界リーダーとの協働を目指しています」とカクタス・コミュニケーションズ株式会社の研究コミュニケーションサービス部門代表、Satyajit Rout は述べています。「映像ではSmall is big (小さいことは偉大なこと)というテーマで、IEDMの豊かな歴史を伝えるだけでなく、明日のテクノロジーが今日の会話になる場としてのすばらしい会議のプログラムを紹介しています。この2分間の映像で、サンフランシスコで開催されるIEDM 2018今年の会議についての必要な情報のすべてを、参加者に凝縮して伝えています。今回、映像を英語と中国語(簡体字)で公開することで、IEDMを世界の隅々にまで発信することができると考えています」。 IEDM 2018は、2018年12月1日から5日にヒルトン・サンフランシスコ・ユニオンスクエアで開催される予定です。多くの分野の先駆的業績にスポットライトを当てるという会議の伝統を守る形で、230件ほどの技術プレゼンテーションが予定されています、会議は現代の科学者、エンジニア、学生による学際的なニーズや継続教育のニーズに応えるものとして進化を続けています。 映像は、IEDMのソーシャルメディアでもご覧頂けます。 Twitter: https://twitter.com/ieee_iedm LinkedIn: https://www.linkedin.com/company/iedm-conference/ Facebook: https://www.facebook.com/IEEE.IEDM/
Times Higher Education(THE)の世界大学ランキング2019が発表されました。早速ランキングに関連する様々な記事が出ていて、そのうちのいくつかを読みましたが、ある記事では『(略)大学の「数」で勝負する日本』と題して、日本は1,000位以内に入っている大学の数がアメリカの大学に次いで2番目に多い!なんていう評価が出ていてびっくりしました。1,000位以内の大学数の多さで競っているとは…。ある意味新しい視点です。今年のランキングでは、中国の名門校、清華大学がアジア1位になりましたね。評論記事では「やはり中国勢の勢いがすごい」などの論調の記事が多いようです。私自身も自分でTHEのランキングを詳しく眺めてみて感じることがありましたので、データとともに取り急ぎまとめてみました。特に私が気になっているのは、中国ではなく、アジア全体での日本の立ち位置です。 日本は科学技術立国を自負しており、今でもアメリカ、中国に次いで3番目の地位にいるのではと思っている方がたくさんいると思います。ましてやアジアでは中国と接戦しているに違いないと。恐らく現状はまだそうであると私も思いますが、客観的なデータを見る限り、産業からの申請が大半である特許数以外で、論文数や論文の引用数はそれを表す結果になっていない現状があります。そして、今回のランキングでも、やはり日本がアジアで研究において確たる地位を誇っていることを示す結果になっていないように思います。 実はちょうど先日9月19日、20日に神戸で開催された「RA協議会 第4回年次大会」に弊社も出展し、セミナー「THEランキングを急速に伸ばすアジアの大学に学ぶ国際化・研究広報の最新動向」にて私自身、アジアの大学の大学ランキングにおける課題と、ランキングを急速に伸ばす韓国の大学の戦略について、独自に行った事例調査の結果を詳しくお話しさせていただいたところでした。そのセミナーで、お隣韓国は、国全体としては日本と同じように大学ランキングで苦戦しているが、その中でもしっかり順位を上げている大学があること、そしてそれらの大学はTHEでランキングを上げるための戦い方をしっかり学び、その戦いのルールに従って健闘しているとお伝えしました。興味がある方はプレゼンテーションをご参照ください。そんな韓国の動向も大変気になるところです。 THEランキングには、世界大学ランキング、アジア大学ランキング、日本の大学ランキングがありますが、2019版はまだ世界大学ランキングしか発表されていませんので、自分で世界大学ランキング2019において日本と地理的に近い東アジア・東南アジア地域のトップ30大学のランキングと各指標をまとめてみました。以下の表をご覧ください。 Googleスプレッドシートのダウンロードはこちらから まずはTOP5大学。 1位 Tsinghua University (清華大学) 2位 National University of Singapore (シンガポール国立大学) 3位 Peking University (北京大学) 4位 University of Hong Kong (香港大学) 5位 The University of Tokyo (東京大学) 特筆すべきは、中国の大学が初のアジア1位に輝いたことです。2016年にランキングシステムが大幅改定され、そこで軒並み日本の大学のランキングが下落したことで、それまでずっとアジア1位であった東京大学が突然7位になってしまいました。代わって1位になったのがシンガポール国立大学です。そこからシンガポール国立大学は3年間首位の座を守っていましたが、やはり中国の勢いが今回は上回りました。昨年は国内最大のライバルである3位の北京大学とはわずか0.2ポイント差での2位でしたので、今回は数3.6ポイント差をつけて、しかもアジア1位。清華大学の経営陣はきっと大喜びでしょう。ただ、シンガポール国立大学とは0.4ポイントしか差がないので、来年はまた順位が入れ替わるかもしれません。ちなみに先月、弊社のお客様である清華大学の准教授にお会いした際に、清華大学の研究者がいかにしのぎを削って研究しているか、その研究環境がいかに競争的であるかという話を、これでもかという程伺ったので、このまま攻め続けていけばこの大学はまだまだ伸びていくかもしれません。 次に国。地域別で見てみましょう。各国。各地域いくつの大学が30位にランクインしているでしょうか。 1位 中国(9大学) 2位 韓国(7大学) 3位 日本(6大学) 4位 香港(5大学) 5位 シンガポール(2大学) 国・地域別の数字は日本ではなぜかあまり語られることがありません。日本にとって決して好ましい数字ではないからかもしれません。韓国の大学数は200程度、日本は750以上の大学があるのに対し、トップ30位に入る大学数は日本が6大学、韓国は7大学と負けています。日本の研究はアジアでトップクラスであるのだから、せめて旧7帝大が全て入っていてもおかしくないんじゃないかと私も思いますが、実際にはそうはなっていません。もう1つ意外なことに、韓国は私立大学が3校ランクインしていますが、日本の私立大学はゼロです。先月インタビューに伺い事例調査発表でも取り上げた韓国の私立大学のSungkyunkwan Universityが今年さらにランキングを上げて、京都大学の次にランクインしています。この大学は、ランキングをどう上げるか、本当によく研究し実行していると感心してしまいました。 中国は国を挙げて科学技術に取り組んでいるので、日本との単純比較は無意味だと思いますが、総じて研究の質が年々上がっているというのは紛れもない事実です。そしてこれからも上がっていく事は間違いないと思います。すべてにおいて今の日本と規模が違うので、中国は必ずしもいい意味だけでなく、悪い意味でも話題に上りがちですが、私自身の中国アカデミアに対する印象は実際にたくさんの中国人の研究者や大学関係者の方々とお会いしてお話を聞く機会を通じて、大きく変わりました。科学技術への投資の規模に関わらず、中国から日本が学ぶべきこと、学んで実践できることはたくさんあると感じています。それについてはまた次の機会に書ければと思います。 意外な事に、規模の小さい香港で5大学も30位にランクインしています。シンガポール同様に、英語を強みとしているため、THEランキングを構成する指標のうちでも特にInternational Outlookがどの大学も非常に高く、Citationも同様に高い大学が多いです。 Citationは特に日本の大学が課題に挙げている指標でもあります。アジアトップ30大学と比較しても、残念なことにCitationが最も低い大学の下位4位が全て日本の大学です。Citationと関連が深いInternational Outlookも同様に日本の大学は総じて数値が低く、下位5大学中、3大学が日本の大学です。それ以外の指標は各大学によりまちまちですが、共通している課題が上記2点です。International Outlookはスコアに占める割合が僅か7.5%ですが、この数字は他のスコアに影響を及ぼすので、波及効果も見込み、注力していく必要があるのかなと思います。 日本の大学について、ついついマイナスな事ばかり並べてしまいましたが、実はアジア諸外国の大学関係者の方々にお話を伺っていると必ず言及されるのが「日本の大学の研究力の底力」です。戦後から基礎研究に重きをおき、こつこつと実績を積み上げてきた日本のノウハウは、どんなに新興国・地域が予算や人材をつぎ込んでもそう簡単に構築できるものではありません。その基礎に大学が大きく貢献してきました。私は、今日本の大学に突きつけられている問いは、「あなたの大学は、大学ランキングをどう捉え、どう扱うか」だと思います。 文科省の目標がどうあれ、「我々は独自路線で行く」とランキングに目を向けず、大学が正しいと思う独自の価値を追求するのも一つの選択肢です。また「いや、ランキングの世界で真っ向から戦い、世界から優秀な研究者や技術を取り込む戦略にしたい」と目標を定めることも大変重要だと思います。ただ、海外の大学と比較すると、今の日本の大学の多くは、どちらにも戦略を決めかねていない、あるいは決めていても実行に移せない理由があるのではないか、と感じることがよくあります。後者を選択した際は徹底的にメカニズムを解明して、一つ一つ実行する。決断と実行あるのみ。これに尽きます。多くの日本の大学が本来の実力を世界に認められ、数年後にまた日本勢が大きく巻き返していることを期待したいと思います。
(湯浅 誠/カクタス・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役) 9月19日から開催されるRA協議会第4年次大会で、ランチョンセミナーをやらせていただくのですが、会社のサービスをPRするだけのプロモーションセミナーではなく、ご参加される大学URAの方が多大なる関心を寄せている大学ランキングについて、韓国と中国の事例を挙げながら説明して行きたいと思い、ここ最近本格的に大学ランキングについて勉強をしています。
(湯浅 誠/カクタス・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役) 6月末恒例のQ1(第一四半期)総括を行いにインド本社へ出張に来ており、今晩日本へ帰国します。週末なので1日やる事がないという日本ではあり得ない贅沢な時間を使い、ブログ記事を書いています。今週はW杯のポーランド戦があり日本では賛否両論出ていますが、私は何も問題ない戦略なのかなと思いました。事前の評判ではボコボコの3連敗を予測していた当事者でもあるので、決勝ラウンドまで行った事自体が奇跡で、そこまでの辿り着き方に文句をつけるのは少し注文が多すぎると思います。 いつもW杯で話題になるのがこの最初の予選ラウンドを勝ち抜くかどうかですが、今の日本代表で昔から毎回「やるからには優勝を目指す」「最低でもベスト4」と発言されている選手がいますよね?そうそう、本田選手。 残念ながらそこまで行くのはないかなと思いますが、彼の大口叩きは見ていて面白いです。これはスポーツだとすごく違和感を感じる方がいると思いますが、ビジネスではしょっちゅう聞く話です。創業して間もないソフトバンクで孫さんが「俺はいつかこの会社を兆単位の売上にしてやる」と言って呆れた従業員が辞めたのは有名な話です。今でも成長を続けているユニクロの柳井さんも5兆円の売上にすると話されています。我々一般人からすると「そんなの無理に決まっているだろ。一体どうやって実現するんだよ」と先にHOWに焦点を当ててしまいます。同じように「サッカー後進国の日本がどうやって優勝するんだよ?」先に現実を考えてしまいますよね!? 今回このトピックを書こうと思ったきっかけは、インド本社の社長であるアビシェック・ゴエルと一昨日二人でランチミーティングをしていた際にした話題が自分の心に残ったからです。 カクタスグループは現在全世界で700名近くのスタッフを抱えています。創業は2002年で現在16年目です。創業間もない2003年に私はインターンでこのインド本社で働く事になったのですが、その当時は20代前半の若者10名弱でおんぼろの工場から電話回線でネットを使い、停電週1回は当たり前の状況でした。そこから皆で必死に仕事をして、当時ではだいぶグレードのアップした、いわゆる普通のオフィスに移転しました。これが2004年終わりの出来事でした。その時はまだまだ小さいオフィスでしたが、工場からオフィスに格上げされたようで凄く嬉しかったのを今でも鮮明に覚えています。 社員が年々増え続けるのに合わせてオフィスビルの他の部屋をちょこちょこ借りながらなんとか凌いできましたが、とうとう限界が来て、遂に今年新オフィスに移転することになりました。今回のインド訪問がちょうど移転と重なりバタバタでしたが、その合間にアビシェックと二人でランチをしながら過去の話にふけっていました。2フロアで1500坪以上で毎月の家賃も馬鹿になりません。家具から会議室のセットアップなど、かなりの金額を投資しました。 アビシェック曰く、「今回のオフィス移転は今の我々にとって必要な事だった。1フロアに全ての部署が集まる事により無駄がなくなる。また中堅企業らしいサイズのオフィスになり、従業員も会社に対してプライドを持つことが出来る」と、更に「家賃も高いし、海外人材への給料もインドに比べて数倍高い。しかし会社は成長していくし、それを支えるインフラと人材がいるから大丈夫」と。 と同時に、「今成長出来ているから現状維持でいいとか、日本のアカデミアが下降気味だから現状維持で中国に行こうとかは考えないでほしい。日本にもまだまだビジネスチャンスは絶対にあるはず。今はまだ顕在化されていないマーケットを何としても開拓してほしい。いつ何時でも成長する事を忘れないで」と言われました。 彼のその言葉に、私は今日本で大きな成長を遂げ、新しいマーケットを確立したZOZOTOWNの例を話しました。ZOZOTOWNは「ZOZOスーツ」を開発し、オンラインショッピングの一番のペインポイントであるサイズの問題を解消することで、実店舗となんら違いがないオンラインショップを目指している。そしてその社長はとんでもないビジョンの持ち主で、攻めに攻めている、と。実は、ZOZOTOWNの前澤社長は私の地元の中学の輩で、うちの兄の友人でもあったので、私も中学時代の彼を知っていました。抜群に頭が良く、実に変わったユニークな人でした。人懐っこくて素直で愛嬌があったけど、同時に人と同じ事をしない。この人は将来はなにか特別な事をする人になるのだろうなー、と漠然と感じていました。レコードの通販会社を興した時にどのような志を持っていたかわかりませんが、ここまでの成長は彼の「能力」も多分にあったと思う一方、やはり重要なのは「志」の高さだったのではないかと思います。今の企業の姿にどう辿り着くかの「HOW」は、その成長の志を持った社員全員で考え、試行錯誤した結果なのだと思います。 ソフトバンクの孫さんも、翻訳ソフトを売っていた頃は今ほどの能力はなかったと思いますが、高い志を持ち、常に上を上を目指した結果、今のソフトバンクがあるのだと思います。ユニクロ、楽天など、いわゆるここ数十年の新興企業の共通点は、ものすごく高い「志」を持ったカリスマ経営者が、すごい勢いで会社を牽引して成功していることです。私は多国籍の社員と仕事をしているのでよくわかるのですが、日本人はリーダーシップは苦手な一方で、強いリーダーがいて明確なビジョンを打ち出した時には社員が一丸となって猛進します。日本のビジネスが衰退している原因は、経済だったり、高齢化社会だったりと、あげればきりがありませんが、同じ環境に置かれていても、飛躍的に成長している企業がたくさん存在しているのも事実なのです。 今挙げたような有名企業とカクタスを比較するのは大変おこがましいですが、アビシェックに「私の昇給にとんでもなく高い志を持っている妻に普段から『柳井さん、孫さん、前澤君が何十億も稼いでいるんだから、あなたもそれくらいを目標に仕事をしなさい!』って言われているんだ(笑)」と言うと、彼は笑いながらも「いや、いいことだと思う。本気でその位の志を持って仕事をして、皆で今の何十倍、何百倍の会社にしよう」と言いました。カクタスはまだまだ中小企業に域を出た程度の小規模会社ですが、彼と話しながら「自分が還暦を迎える20年後には、カクタスはそれなりの規模になるに違いない」と思いました。 ただし、企業が成長し続けるための必要不可欠な条件は、常に経営者が高い志を持ち、それをしっかりわかりやくすスタッフ全員に伝えていく事です。経営者のリーダーシップがなければ、どれだけ能力の高い天才集団の社員を雇っていたとしても、企業の成長はそれなりの規模で止まると思います。 「成長なくば去れ – Change or die – 」はユニクロ柳井さんがよく口にする言葉ですが、まさにその通り!!!・・・なんてカッコつけて書きながらも、私自身仕事で悩むことはしばしばあるので、その時はこのブログを読んで自分を鼓舞したいと思います。 追伸:この記事はベルギーとの対戦前に書いていますが、もし日本が勝利して、次のブラジル(恐らく)にも勝利してベスト4になれば、本田選手の発言は大口ではなく、高い「志」の結果になりますね。頑張れニッポン。
(湯浅 誠/カクタス・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役) 前回のブログ記事で中国の研究費について少しお話をさせていただきました。恐らく国としてはイケイケドンドンで進んでいると思いますが、基礎研究への国からの直接投資額を見ると、それ程大きな金額には見えないと書かせていただきました。こちらについては今後半年で新たな知見が得られたら、改めてお話できればと思っています。 中国でも分野別でかなり事情が異なっているようですので、今回はそこを重点的に書いていこうと思います。まず日本でも言われている理系と文系の格差ですが、中国の方が更に大きい印象を受けました。今回お会いした方は皆さん大きな括りで言えば理系でしたが、ほとんどの中国人研究者が「詳しくは知らないけど、文系に研究費予算はほとんど投入されていないと思う。中国はもう明確すぎる程に科学技術に焦点を当てており、人文社会系は重要視されていない」とお話されていました。この現象は全世界規模で起きているのでしょうか?! では重要視されている理系は全分野に予算が来ているのかというと、そうでもないようです。南京でお会いした准教授の方は環境学の研究をされています。どちらかというと応用よりは基礎科学中心の研究のようです。そのため企業との共同研究はあまりなく、また規模の小さい大学であるため研究費の獲得も苦労されているようでした。大学が生き残るために海外での研究経験をある人たちと国内のみの研究者を入れ替えしたいらしく、厳しい英語論文数のノルマが課せられています。よって学内でも必死の生き残りをかけ、このお客様はしばしば身銭を切ってでも私達にご依頼をしてくれていました。また依頼サービスも様々で論文の校正のみならず、中英翻訳、そして論文投稿サポートまで幅広くご利用いただいています。研究以外に教育活動が相当忙しいので、ご自分で論文をすべて英語で書いて、投稿から再投稿の準備までをすべてこなすのは時間的に無理のようで、「あなたたちに任せられるものは基本的に何でも依頼している」とのことでした。それで研究費では賄い切れないところはご自分で負担されているようです。 同じく南京の別の情報系大学の教授にお会いした際にいただいたお話は「教授になっても論文発表が少なく、研究費が少ないと、委員会や部会での担当をどんどん外されてしまう。自分が大学である程度のプレゼンスを維持するためには、この二つ(論文、研究費)はずっと必要。解雇される事はないが、結果が出ていないと様々な人事に影響が出るので、実際はあくせく論文を書いている」とのことでした。 ではメジャー大学ではどのような状況でしょうか?上海交通大学でお会いした2名の准教授(工学、情報学)のお話は色々と共通点がありました。かなり大学の経営が特徴的でしたので、要点を以下まとめてみました。 ***** 1. 経営陣がかなりの裁量で人事権を行使しており、雇用安定は結果(論文、研究費)が相当の割合を占める。しかし中国独特の「人間関係」も同時にものをいうので学科長、学部長から気に入られるのは大変重要 2. 教員の給料の裁量も大学にあるようで、ベースを下げたり、また上げたりすることもある。上げる理由は主に海外からのスーパー研究者を雇用する場合で、人によっては数千万円相当の給与を払っている場合もある。逆にベースの給料は低く、業績により上積みされている。研究費をたくさん獲得すると、その一部を自分の給与にする事ができる 3. 大学を挙げて教員にベンチャー設立を促している。ただ大学から何らかのサポートがある訳ではなく、どちらかといえばトップダウンで奨励されている 4. 実際ベンチャーは設立されているのか?上海交通大学は抜群の知名度を誇るので、共同研究を希望する民間企業が多く(実は今の中国では我々の定義である純民間企業が半数以上あります)、共同研究を目的としたベンチャー立ち上げは積極的に行われている 5. その事情を反映してか、民間企業からの研究費支援は相当ある(お会いしたお二人とも政府系資金と民間資金は同額程度あるとお話されていました)。お話を伺っていると研究者から、民間と共同研究する事の抵抗感は全くない。むしろ一緒にやれることは積極的に行う姿勢。ただしこの話は有名大学限定で、小規模大学では稀。 6. 研究室の院生を卒業させるためには、SCIにインデックスされている英文誌での掲載が必須なので、学生の論文にかなりの時間が取られる。しかしそのノルマがあるので、各研究室から必然的に年間論文10本以上が掲載される 7. 学内には民間企業の広告や展示ブースなどもあり、日本の大学と違い、相当コマーシャルな匂いがしました。学問、研究の重要性は当然ですが、稼ぐ力も同様に求められるのが日本との違いのような気がします ***** ここまで読まれて若干疑念を持たれる方もいるかと思います。「やりすぎだ」「節操がない」「拝金主義だ」などなど、私もなにかしら感じる事はあります。ただその一方でグローバル企業の一員として他の外国籍企業と争う時に感じるのが、勝つためのルールはあってないようなもの、そしてやったもの勝ちの世界でもあるということです。美しく試合をしても負けては意味がない。柔道がその例かと思いますが、一本のみを狙っても判定で負けてしまったらダメ。柔道の世界では、フランスを中心としてヨーロッパの柔道レベルが上がったために、日本的な柔道が変わり、今のグローバル柔道の形になりました。 私は日本のアカデミアが中国を見習うべきと思っている訳ではありませんが、中国で起きている熾烈な争いとそれに伴う論文数の増加(また最近では品質も上がって来ています)、大学のランクアップを見て、科学技術先進国としてどう対応していくかを考えたほうがいいと思います。日本のトップ大学の中長期目標を拝見すると多くの大学がTHE大学ランキング100位を目標としていますが、競合(中国、韓国)はなりふり構わず突き進んでいます。目標を掲げる以上、達成するための行動指針があると思いますが、ランキングは相対的評価なので自分達だけを見ていては意味がなく、海外の競合大学の動向にあわせて自分達を変えていかなければなりません。 「中韓と同じようには戦わない」と決めるのはもちろん問題ないと思いますが、その場合は一律ランキング100位ではなく、自分達の立ち位置だったり特徴をしっかり考え、「我々はランキングではなくてこの方向で進んで行く」との日本らしさを出す時期にいるのではないかと思いました。でもこのオンリーワンを貫くのは大変で、一貫性、忍耐そして各ステークホルダーに対する継続的な対話が求められます。 部外者が各国の諸事情を深く理解していないで好き勝手な事を言ってしまいましたが、ものすごい勢いで伸びている中国の内情を少し見てしまうと、正直普通の戦い方では勝ち目がないと思ったので、本記事でその状況について綴ってみました。
(加納 愛 / ブランディング・事業開発部、アソシエイト・ヴァイスプレジデント) ブランディング&事業開発担当の加納です。先々週、最近スターバックスが従業員の人種差別防止研修の目的で、全米8千店を一斉閉鎖したことが大きなニュースになっていました。スタバの徹底したブランディングは有名ですよね。この例はブランディングって何?の答えが詰まっているわかりやすい例だと思うので、少し論じてみたいと思います。 スタバ全米8千店、一斉休業 黒人客逮捕で差別防止研修 テレビのニュースではニューヨークの街頭で「今日どこでコーヒーを飲んだらいいのよ!」と文句を言っているアメリカ人カスタマーの姿や、一部株主から営業閉鎖に不満も…なんて取り上げているメディアもありましたが、おおむね「やっぱスタバはすごいわ」という感嘆をもって評価されているという印象を受けます。 スターバックスは「インクルージョン(Inclusion)」を重要な企業文化として掲げているわけですが、実際にLGBTの取り組み、賃金の男女差の100%解消、トランプの難民政策に反発しての難民1万人雇用宣言など、社会的な発言やアクションを起こしてしばしば話題になっています。 Inclusion at Starbucks(スターバックスにおけるインクルージョン) 上のリンクのページにもありますが、インクルージョンについての文の最後は次の文章で締めくくられているのが印象的です。 We will continue to strive to create a culture of belonging – where everyone is welcome- so that we can continue to drive innovation and growth through our people. (私たちは親密感を感じられる文化〜誰もが歓迎される場所〜を作ることに引き続き努力することで、働く人々を通じてイノベーションと成長を駆動していきます) このスタバのポリシーが世界中に知られているからこそ、「スタバ職員がまさかの人種差別?誰でも歓迎するのがスタバだろ?ありえない!」とまさに世界中の人々が驚くわけです。そのスキャンダルを「ありえないんです、その通りです!これは企業の存続に関わる非常事態なので営業利益度外視で全店舗休業して社員教育します!」とセルフ炎上商法で何百倍にも事を大きくし、事件を利用していかにスタバが反差別であるかを世界中に印象付けようとする経営陣の徹底ぶり、本当にすごい。ここまでやれる企業は世界でも稀だと思います。 似たような話で有名なのがリッツ・カールトン。リッツ・カールトンにはグループ直営ではないパートナーホテルが世界中にたくさんあるわけですが、そのうち1つのパートナーホテルがブランドのポリシーに反するサービスを提供していると顧客から苦情があった際に、翌日の朝にはホテルのエントランスの看板から客室のメモ帳に至るまで、すべてのプロパティからリッツのロゴが外されていたという有名な事例があります。 このリッツの事例研究は会社の研修制度でインドのトップ経営大学院の一つ、Indian School of Business (ISB)でブランディング講座に参加した時に学んだのですが、その時に素晴らしい講義をしてくれたアメリカ人のブランドコンサルタントが強く強調していたことは「やりすぎること(doing too much)が大切。やりすぎて初めて、その企業は人の心に残るブランドになる」ということでした。日本で教えを請うていた著名なブランディングの専門家の先生も、全く同じ事をおっしゃっていました。スタバの例もリッツの例も、一度聞いたら企業の価値とセットで心に刻み込まれて忘れない。確かにその通りです。 前回はマーケティングについて書きましたが、ブランディングとマーケティングを混同している人はたくさんいます。さほど規模の大きくない組織では、ブランディングとマーケティングを同じチームが兼ねていることも多いですが、似て全く非なるもの。うちの社内でも、「ブランディング担当です」と自己紹介するとトンチンカンなリクエストをされることがよくあります。 あるある・その1「競合比較してうちのサービスを差異化する宣伝文作って」 あるある・その2「じゃあホームページに乗せるブランド・メッセージ考えてよ」 あるある・その3「有名ブランドと契約して、パートナーのバナー増やして」 え、いや、あのー、ブランディングってそういうことじゃないんです…。と思う事も多いので、上記のリクエストに反論しつつ、ここでは自分がブランディングの肝だと思っている3つのポイントを議論したいと思います。 […]
