【誠のFACT】THE世界大学ランキング2021レビュー〜日本の大学、戦うか闘わざるか、それが問題だ
(湯浅 誠/カクタス・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役) 毎年恒例であるTHE世界大学ランキングの2021年版が9月2日に発表されました。昨年はランキングにノミネートされた日本の大学数がアメリカに次ぎ2番目に多かったため、マスコミ各社が頑張ってポジティブな報道していたことを覚えていますが、今年は報道があまり盛り上がりませんでしたね。毎年恒例にしているこの私的THEランキングレビューも、そんな理由で執筆がついつい遅くなってしまいましたが、今年もちゃんと分析していきたいと思います! いまだ勢い止まらぬ中国、下降を続ける日本 今年のTHEのニュースがいまいち日本で盛り上がらなかったのは、もはや日本の大学についてのネガティブな情報を出し続けることに意味がないからかもしれません。今更どうにもできない現実であるからかもしれません。ランキングを経年的に見ればわかりますが、日本の大学のランキングは総じてまだ下がり続けており、それとは真逆に中国の大学はまだまだ伸びています。昨年は初めて清華大学が世界ランキングトップ20に入り、中国は大いに盛り上がりました。そして今年は清華大学だけでなく、清華のライバルである北京大学も20位以内に入り(何と今回は両大学が同スコアーで共に16位でした)、私の予想では5年以内にどちらかの大学は世界トップ10に入ると思います。 ランキングを伸ばした中国の大学の各スコアを世界のトップ大学と比較すると、唯一の死角は「国際性」です。しかしそれも、北京大学においては過去5年以上連続でスコアを伸ばしており、今年は65までアップしました。この流れが続けば5年後には70以上になると思います。今年の世界大学ランキング9位であるイェール大学(アメリカ)の国際性スコアが69.9なので、かなり近い位置に来ていると思います。つまり、中国のトップ大学は軒並みこれまで弱かった国際性の改善に乗り出しているというわけです。私は何も中国の大学を賞賛したいわけではありません。中国は国をあげて、大学ランキングに本気で勝ちに来ていると言いたいのです。本気度が違います。 日本は本気でゲームを戦っていない 日本も以前安倍元首相が「世界のトップ100に日本の大学を10校ランクインさせる」と発言されていましたが、その効果はなかったように思えます。私が常に気になるのは、日本はこのランキング・ゲームに本気で勝ちたいのかどうかということです。とりあえずみんなが参加するから参加して、少しランキングが上がればそれでいいと思っているのではないか?と感じてしまいます。このゲームにはルールがあるのです。ランキングに本気で挑み戦略を打つ近隣諸外国の大学に本当に勝ちたいのであれば、ルールを研究して同じ土俵に立たなければいけません。 あるいは、大学ランキングに本当に意味がないと思うのであれば、甘んじて相対的なランキングダウンを受け入れるのではなく、「我々は今の大学ランキングの仕組みには賛同できないので、大学として参加を見送ります」と意思を表明し、THEへのデータ提供を行わない選択肢もあるのです。そんな大学がもっと出てきてもいいかと思いますし、それはそれで既存のランキングシステムのあり方に一石を投じられ、話題になりそうです。しかし、もちろんそれは大学にとっては大変勇気がいる決断だと思います。 あらためてTHE大学ランキングの指標をおさらい 日本の大学のランキングへのスタンスはわかりませんが、ひとまず「勝てるなら勝ちたいと思っている」という前提で話を進めましょう。過去の記事で既にご紹介していますが、改めてTHEの大学ランキング指標について振り返ってみたいと思います。 THEランキングは以下5つの指標に基づき全体のスコアを算出しています。スコアの比重は全て同じではなく、比重の高い指標とそうでない指標があります。そのため、大学のランキング戦略担当はTHEが5つのうちどのスコアに重きを置いているのかを理解し、何をしたらそのスコアが改善されるのかを把握する必要があります。 5つのランキング指標 教育(比率:30%) 研究(比率:30%) 被引用論文(比率:30%) 国際性:(比率7.5%) 産業収入:(比率2.5%) この数字を見ると、最初の3つの指標がスコアを決める上で大変重要であることは明らかです。 引き続き大躍進の中国と健闘の韓国、はたして日本は? では2021年版ランキングにおける日本の大学と、中国・韓国の大学のランキングと各スコアを比較して見てみましょう。 ちなみに、今回は世界ランキング順で日中韓のそれぞれ上位20大学をピックアップして、平均値を出してみたかったのですが、その方法だと中国が高スコアになりバランスが悪いため、強豪が揃う各国の上位5大学だけを取り上げて国別に各ランキング指標のスコアの平均値を出してみました。対象となった大学(上位順)は以下です。 表1:日中韓のトップ5大学の世界ランキング順位 日本 中国 韓国 東京大学(35) 北京大学(16) ソウル大学(54) 京都大学(61) 清華大学(16) KAIST(99) 東北大学(201-250) 復旦大学(60) 成均館大学(122) 大阪大学(301–350) 浙江大学(75) 延世大学(151) 東京工業大学(301–350) 上海交通大学(84) 蔚山科学技術大学(178) ()は世界ランキング順位 表2:日中韓のトップ5大学のランキング指標平均スコア比較 ランキング指標 日本 中国 韓国 教育 64.72 75.54 57.48 研究 67.24 80.1 59.96 被引用論文 […]

