【加納愛のMarkedemia】全米スタバ閉鎖から見るブランディングの本質:我々は何者であるのか、を問い続ける仕事
(加納 愛 / ブランディング・事業開発部、アソシエイト・ヴァイスプレジデント) ブランディング&事業開発担当の加納です。先々週、最近スターバックスが従業員の人種差別防止研修の目的で、全米8千店を一斉閉鎖したことが大きなニュースになっていました。スタバの徹底したブランディングは有名ですよね。この例はブランディングって何?の答えが詰まっているわかりやすい例だと思うので、少し論じてみたいと思います。 スタバ全米8千店、一斉休業 黒人客逮捕で差別防止研修 テレビのニュースではニューヨークの街頭で「今日どこでコーヒーを飲んだらいいのよ!」と文句を言っているアメリカ人カスタマーの姿や、一部株主から営業閉鎖に不満も…なんて取り上げているメディアもありましたが、おおむね「やっぱスタバはすごいわ」という感嘆をもって評価されているという印象を受けます。 スターバックスは「インクルージョン(Inclusion)」を重要な企業文化として掲げているわけですが、実際にLGBTの取り組み、賃金の男女差の100%解消、トランプの難民政策に反発しての難民1万人雇用宣言など、社会的な発言やアクションを起こしてしばしば話題になっています。 Inclusion at Starbucks(スターバックスにおけるインクルージョン) 上のリンクのページにもありますが、インクルージョンについての文の最後は次の文章で締めくくられているのが印象的です。 We will continue to strive to create a culture of belonging – where everyone is welcome- so that we can continue to drive innovation and growth through our people. (私たちは親密感を感じられる文化〜誰もが歓迎される場所〜を作ることに引き続き努力することで、働く人々を通じてイノベーションと成長を駆動していきます) このスタバのポリシーが世界中に知られているからこそ、「スタバ職員がまさかの人種差別?誰でも歓迎するのがスタバだろ?ありえない!」とまさに世界中の人々が驚くわけです。そのスキャンダルを「ありえないんです、その通りです!これは企業の存続に関わる非常事態なので営業利益度外視で全店舗休業して社員教育します!」とセルフ炎上商法で何百倍にも事を大きくし、事件を利用していかにスタバが反差別であるかを世界中に印象付けようとする経営陣の徹底ぶり、本当にすごい。ここまでやれる企業は世界でも稀だと思います。 似たような話で有名なのがリッツ・カールトン。リッツ・カールトンにはグループ直営ではないパートナーホテルが世界中にたくさんあるわけですが、そのうち1つのパートナーホテルがブランドのポリシーに反するサービスを提供していると顧客から苦情があった際に、翌日の朝にはホテルのエントランスの看板から客室のメモ帳に至るまで、すべてのプロパティからリッツのロゴが外されていたという有名な事例があります。 このリッツの事例研究は会社の研修制度でインドのトップ経営大学院の一つ、Indian School of Business (ISB)でブランディング講座に参加した時に学んだのですが、その時に素晴らしい講義をしてくれたアメリカ人のブランドコンサルタントが強く強調していたことは「やりすぎること(doing too much)が大切。やりすぎて初めて、その企業は人の心に残るブランドになる」ということでした。日本で教えを請うていた著名なブランディングの専門家の先生も、全く同じ事をおっしゃっていました。スタバの例もリッツの例も、一度聞いたら企業の価値とセットで心に刻み込まれて忘れない。確かにその通りです。 前回はマーケティングについて書きましたが、ブランディングとマーケティングを混同している人はたくさんいます。さほど規模の大きくない組織では、ブランディングとマーケティングを同じチームが兼ねていることも多いですが、似て全く非なるもの。うちの社内でも、「ブランディング担当です」と自己紹介するとトンチンカンなリクエストをされることがよくあります。 あるある・その1「競合比較してうちのサービスを差異化する宣伝文作って」 あるある・その2「じゃあホームページに乗せるブランド・メッセージ考えてよ」 あるある・その3「有名ブランドと契約して、パートナーのバナー増やして」 え、いや、あのー、ブランディングってそういうことじゃないんです…。と思う事も多いので、上記のリクエストに反論しつつ、ここでは自分がブランディングの肝だと思っている3つのポイントを議論したいと思います。 […]

