2020年7月22日
【誠のFACT】オンラインセールス時代に突入?!
(湯浅 誠/カクタス・コミュニケーションズ株式会社 代表取締役)
新型コロナウイルスの緊急事態宣言が東京で解除された6月から、私はオフィス勤務を再開しました。社員は安全のためほぼ全員が在宅勤務を続けているので特段オフィスに行く必要はないのですが、約3ヶ月間の在宅勤務を経て改めてオフィス勤務をする事で、社会に今起きている様々な変化を自分の目で見て体験したいと思い、あえて毎日オフィスに来てみることにしました。そこでまず気になったのが、営業電話です。オフィスに限られたスタッフしかいないため、会社にかかってくる営業電話を自分で取る事が増えたのですが、これからの営業のあり方について改めて深く考えさせられました。
もう営業根性論が通じなくなる!
自粛が開けてすぐ営業電話が頻繁にかかってくるようになりました。「〇〇ご担当者様いらっしゃいますか?」と聞かれるのですが、そもそも担当者は全員在宅なので「担当者が社内におりません」と返すしかありません。仮に担当者がいても、売り込み電話であれば「コロナの影響で在宅ですので…」と断ることができてしまいます。今後在宅勤務が当たり前になってくると、テレアポはとても非効率的なものになります。それなら、とオフィスを訪問をしたとしても同じ事です。担当が本当にいませんし、「そもそもこんな状況で営業なんて来ないでよ!」と怒られることもありますよね。今もし自分がテレアポの仕事をしていたら、何度かけてもアポが取れなくて転職を考えてしまうかもしれません。
仮に企業が今の2倍のテレアポをしたとしても、売り上げへの貢献はたかが知れているでしょう。営業の根性論撲滅時代へ突入した、と言えるかもしれません。今までと同じやり方を続けても、ただでさえアポ取りの成約率は時間とコストが増えるどころか、営業マンの心が折れてしまいます。私自身、実はカクタス入社時に最初に行った仕事が大学研究室への電話営業でした。インド本社から国際電話で営業電話をかけていたため、電話をすればするほど赤字。結局うまくいかず、代わりの販売手段を真剣に考えた結果が、今では当たり前のように言われるデジタルマーケティングでした。2003年当時はデジタルマーケティング創世記で、導入している企業はほとんどいませんでした。電話営業からデジタルマーケティングに切り替えて半年で、月数件の発注が、月100件に膨れ上がったのです。
従来のやり方がうまくいかないと感じた時こそビジネスチャンスです。当時はSEOやウェブ広告という手法はすでに存在しており、それをいち早く、有効に使った企業に勝機がありました。今ブームになっているZOOMも、去年まで使っている人は非常に少なかったと思います。ビジネスの流れを変えるために、新しい技術を使うことが大切です。
意外とイケる!ZOOMによる新規営業
既存顧客への営業はZOOMやWebExを使ったリモート会議で問題なくできますが、問題は前段のテレアポのような新規営業の場合です。従来は対面で知りあっていない初めて連絡をとる新規顧客にオンライン会議を提案するという習慣がありませんでした。
これはどう解決すべきかと考えていたところ、毎週月曜に行っている会社のZOOM朝礼で営業チームが大変に興味深い報告をしてきました。「今まで受け入れられるかどうか不安であまり試して来なかったのですが、最近新規営業もZOOM提案したら意外とお客様が快く対応してくれました。スクリーンシェアをしながら会社の説明もできるし、何より場所を選ばず会議ができるので、九州のお客様との打ち合わせ後に、北海道のお客様とお会いすることもできますし、移動時間も短縮できます。これからはこれが普通になってほしいと思います」。眼から鱗でした。新規営業は対面でないといけないというのはただの思い込みで、実際はオンラインでも問題ないのです。
ポストコロナでは社外の相手との遠隔ミーティングは当たり前になっていくでしょうし、その方がお客様にとっても営業スタッフにとっても効率がいいだろうと確信しました。大切なお客様とはもちろん重要な局面で直接お会いする必要はありますが、毎回対面の打ち合わせはもう必要ないかもしれません。この変わりゆく現実を受け止めず、誰もいないオフィスにテレアポや訪問販売を続ける会社は時代遅になっていくでしょう。
よくオンラインは味気ないと反論する人がいますが、オンラインとオフラインをうまく使い分けることでむしろ対面の機会を大切にすることができると思います。よくありがちなのが、営業の方に「ご挨拶にお伺いしたいのでお時間をいただけますか?」と言われ、実際にお会いすると、ただの時間潰しなのではないだろうか?と疑うほど何の情報や提案もないままやってくること。これは会社側で打ち合わせ数をノルマにしているので、営業マンは顧客と会った事で仕事をしているつもりになっていることが原因だと思います。忙しい時間を使って対応する側(顧客)にとって大変な迷惑です。オフラインであるからこそ顧客は売り手に多くを期待します。オンラインなら30分位ヒアリングしたいと言われたら、隙間の時間を使って話してもいいだろうと思いますし、依頼する方の壁も低くなる気がします。
これからの営業の働き方
今は全てを電話と訪問に頼らなくても、名刺管理ソフトEightやLinkedInなどのプロフェッショナル向けのSNSを使って営業ネットワークを増やすことができます。私も両方使っていますが、LinkedInから営業したこともありますし、受けることもあります。そしてそれらのオンラインツールは広告収入を主軸としているので、私達の属性、良く見る記事やネットワークから適切な広告を提示してきます。そこに営業活動と連動してオンライン広告を出すのは有効ですよね。営業も個別アプローチ一辺倒ではなくデジタルマーケティングと組み合わせることで、より共感をもって会社について理解してもらえます。
これからの営業は、オンライン広告やオンラインイベントなどを通じてサービスや商品に興味を持ってもらったユーザーに、自宅からリモートで営業ミーティングを行う、というスタイルが確立していくといいと思います。移動時間がなくなる分時間が有効に使えるため、残りの時間をリサーチや新しいアイディア出しに使えます。仕事が早く終われば、今までは早く帰宅することは他の社員の手前気まずかったかもしれませんが、これからは自宅のパソコンからサインオフするだけです。アフターワークも趣味に使ったり習い事に使ったり、運動したりと、本当に今までできなかったことが生活に組み込めます。
趣味や学習を始めたい場合、かなりのところオンラインでしかも安く講座を受講できます。先日社員の一人が「リモートワークで時間ができたので、新しいスキルを習得しようと思いウェブのUX/UIコースを探したところ、デンマークのオンラインコース物凄く受講料が安かったのでそこに決めました」と教えてくれました。これもまた眼から鱗です。日本にいながらスウェーデンの学習コースを受講できる、これもオンライン化による生活の劇的な変化ですもはやオンラインに移行できないことは逆にどれほどあるのでしょうか?
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新型コロナウイルスによる危機は、実は最高のビジネスチャンスです。この局面で旧態依然としたスタイルを貫く会社は恐らく衰退していき、逆に時代に合った提案にどんどん変更している会社は成長していくと思います。今はどの企業も同じ土俵に立っていて、どれだけ速く動くかによって3年後を目安にまた勝ち負けがはっきりしていくと思います。私が尊敬するファーストリテイリングの柳井社長の「Change or die」は、今のポストコロナ時代に最も適切な言葉なのでしょう。